全編モノクロの映画。モノクロなのに美しい、いやカラーだと生々しくて見るに堪えなかったかもしれません。
李淳は台湾の李安監督の息子です。『殺破狼2』や『西遊記』シリーズの鄭保瑞監督作品。撮影自体は2017年だそうです。公開に4年掛かったのは何故なのでしょう?
タイトルの「智齒」は親知らずのこと、「Limbo」は宗教用語で「辺獄」を意味するのだそうです。
㊗第40屆香港電影金像獎、最佳女主角・最佳編劇・最佳攝影・最佳美術指導、4冠!
オススメ度
基本情報
邦題:リンボ
英題:Limbo
原作:雷米の同名小説
監督:鄭保瑞
主演:
林家棟
、刘雅瑟、李淳、池內博之
予告編
あらすじ
左の手首だけが発見される連続猟奇殺人事件が発生した。捜査は劉中選(斬哥)を中心に進む。香港警察学校を首席で卒業してきたばかりのキャリアの任凱(李淳)とコンビを組む。任凱は親知らずが痛んで時々鎮痛剤を服用する。
ある時、斬は捜査そっちのけで1人の女性を見つけて追いかけ始めた。それは王桃(刘雅瑟)、斬の妻を車ではねた張本人だ。王桃は刑に服し、出所している。「許して!罪を償ったじゃないの!」だが斬は王桃を殴る蹴る。斬の怒りが収まらないのは、妻がいまだに植物人間状態で入院しているためだ。王桃は一度は遠くへ逃げようとするも高速バスを降りて斬に協力することにした。
捜査の過程で入れ墨の入った女性の死体が見つかる。検死の結果、薬物をやっていることがわかる。王桃もまた薬物依存者である。斬は王桃にヤクの密売人や裏稼業の情報を出させる。だが、集めた裏稼業の人物の確認をさせたために王桃は裏稼業の連中の恨みも買うことになった。王桃がボコボコにリンチされる。任凱が王桃を守ろうとするが、拳銃を落としてしまう。王桃は拳銃を拾って逃げるが、王桃もまた拳銃を逃げる途中で紛失する。
任凱は必死で拳銃を探す。斬も手伝うが結局は見つからず終い。任凱は署に紛失を報告しようとするが斬に止められる。「止めろ!クビになるぞ。俺に任せておけ」
ヤクの売人をあたっていると、日本語を話す人物の存在が浮上した。入国後に行方不明になった日本人を調べ、山田收(池内博之)の写真を入手すると、事件関係者に当たる。確かに山田で間違いないようだ。
そして、斬の妻はとうとう息を引き取った。
路上生活者となった山田を斬と任凱が追う。
感想など
池内博之さんが登場するのは物語半分の1時間が経過した後半から。その後半は極端に台詞量が減ります。モノクロの映像、しかもほとんど雨の中、それが美しい。任凱の親知らずと拳銃についてがどうなるかは見てのお楽しみです。もし映画館で臭いも感じられるようになっていたとしたら、本作は常に悪臭が漂うに違いないくらい、臭そうなシーンが多いです。モノクロで良かった。
王桃を演じた刘雅瑟には主演女優賞を願う。ゴミの中で、雨の中で熱演していました。Limboは王桃のことなのですね。罪を償って出所しても酷い目に遭ってボロボロになって「どうすれば許されるの?」と泣きます。まるで無間地獄。王桃は最後に救われたのか?救いになっていないのか?妻は救われたと思っています。私は救われていないと思っています。
ミステリーとしては期待しない方がよいでしょう。いろいろなこと、例えば動機であるとかが不明なまま終わりますので。