香港映画界のレジェンド級監督7人によるオムニバス映画。当初は吳宇森監督も加えた8人でタイトルも『八部半』だったそうです。吳宇森監督が身体的理由で降板して7人となり、タイトルも改題されたとのことです。天台練功(稽古)が1950年代で、それから少しずつ年代が下っていき、深刻對話(深い会話)は2020年代となっています。
オススメ度
基本情報
邦題:七人楽隊(2020年第21回東京フィルメックスにて上映)
邦題:七人樂隊(全国ロードショー)
英題:Septet: The Story of Hong Kong
予告編
あらすじ
洪金寶監督:天台練功(稽古)
屋上で稽古をする子供たち。指導者の役は洪金寶の息子・洪天明が演じる。ただひたすらに稽古のシーンが続くが、演じている子供たちも日ごろ相当訓練を積んでいるとわかる身体能力。洪金寶の自伝的な作品のようです(洪金寶が成龍らと過ごした日々は映画『七小福』にて詳しく描かれています)。
洪金寶も最後に少しだけ出演。
許鞍華監督:校長(校長先生)
主演は吳鎮宇が校長役、他に王老師役で馬賽が出演している。1961年の小学校が舞台。教師と子供たちの交流を描く。叱るにしても怒鳴ったりしない。そして、2001年。同窓会の席で校長はかつての教え子と再会する。
吳鎮宇、若き頃(『古惑仔』の頃)は広東語読みのン・ジャンユー表記でしたが、いつからかクレジットが英語名のフランシス・ン表記となりました。当時「バージョンアップした」と思いました。
譚家明監督:別夜(別れの夜)
主演は余香凝と吳澋滔。1980年代の恋人たちを描く。女性の方の一家がイギリスに移住する。もう会えなくなる。その最後の残された1日を一緒に過ごす。ちょっと切ない。
1997年の中国返還を前に海外に移住する人たちも少なくなかったようです。俳優でも張國榮も一時期香港を離れました。この映画のような感じの恋人たちもいたのでしょう。山口百恵さんの《秋桜》をカバーした甄楚倩の《深夜港灣》が流れます。この当時の香港流行歌はほとんど日米欧のカバー曲でした。
袁和平監督:回歸(回帰)
監督も七小福の一員なら、主演の元華もそのひとり。元華はおじいちゃんを演じる。孫娘役に林愷鈴。試験のために一時帰国していた孫娘はおじいちゃんの作る料理が口に合わない。また、部屋をノックせずに入ってきてちょっとうんざり。しかし試験当日、チンピラに絡まれたところをおじいちゃんは功夫で撃退する。そんなおじいちゃんは英語が苦手。孫娘は英語を、おじいちゃんは功夫を互いに教える。そして孫娘は再び海外へ。
3年後、おじいちゃんのもとへ孫娘が訪れる。
おじいちゃんと孫娘の交流がとても温かくて和みます。TVの映像は関徳興版の『黄飛鴻』でしょう。
林愷鈴、新宿武蔵野館の本作紹介ページでは姓がラムと広東語読みになっていますが、台湾国籍も有しており、英語表記がLinであることから、リン表記が相応しいかと思います。
杜琪峯監督:遍地黃金(ぼろ儲け)
主演は伍詠詩、胡子彤、徐浩昌の3人。
(株式など経済の内容を掴み切れず)
徐浩昌は新宿武蔵野館の本作紹介ページではツイとなっていますが、香港俳優・徐錦江と同じ徐姓ですので、チョイとしました。発音としてはツォイに聞こえますが。
林嶺東監督:迷路(道に迷う)
主演は 任達華 、龔慈恩、林宇軒の3人。 任達華 は常にカメラを持ち歩く。古い写真と現在の風景を重ね合わせてノスタルジックな想いに耽る。中環あたりの街並みが多く映っていました。
徐克監督:深刻對話(深い会話)
主演は張達明、張錦程、林雪、劉國昌の4人。大半が張達明と張錦程の精神科医と患者の診察と言うより掛け合い。まるで漫才。その様子をガラス越しに林雪と劉國昌の2人が見て話をしている。
最後は徐克自身も登場し、「ん?」となる。
ラストにて徐克が話していた隣の人は許鞍華だと思いますが、自信がないです。
感想など
香港映画界を代表する7名のレジェンド監督たち。どの1人をとっても「代表作はこれ」と選べないほどの作品があります。
銃撃戦やアクションもなく、冇厘頭もなく、恋愛もほぼなく。しかしどれをとっても温かい内容で、鑑賞後は満足した気分になれるのではないかと思います。オススメです。
2022年10月7日より新宿武蔵野館ほか、全国ロードショー予定です。